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0710221.jpg  時間芸術。ちゃんと広辞苑に載っている言葉であるが、もう少しここでは意味をずらして限定させる。要するに、表現された時間につきあわないとアカン、ということだ。音楽はその最たるものだろう。
 ほかに映画もあるが、ことストーリーだけ追いたいって時、字幕だと倍速再生というむちゃくちゃな手段がある。むちゃくちゃでも、ストーリーだけなら把握できる。勿論邪道だし、それで映画を見た気分になってもらっては困るんだが、それでも、ストーリーだけ、セリフだけ、なら把握できる。
 本は人によって読むスピードが異なるから、時間的な強制はあるが、同じ時間を過ごす、という面ではいまいちだ。
 ところが、音楽だけはどうしようもない。倍速で聞いて音程変わるってことで、最近は音程を変えずに速度だけ変えて聞く装置もあるが、当然リズムが狂う。まあ、映画の時のようにストーリーだけ把握できるというなら、雰囲気だけは把握できるのかもしれないが、かなり特殊な才能を要するだろう。
 つまり、演奏家が1時間演奏したら、やっばりこちらも1時間は対峙しなけりゃならんのだ。
 さって。アート・アンサンブル・オブ・シカゴである。今や伝説のライヴ・パフォーマンスを行ったグループと言えるであろう。残念ながらワタクシは見ていない。見てないヤツはお馬鹿さん、らしい。ワタクシはそういう風潮が大嫌いで、敢えてビデオ等も見ずにライヴ・レコードだけを聞いていた。それでも十分凄さは伝わって来るし、感動するし、鳥肌ものだった。ちなみにマンデル・ホールコンサートというアルバムだったが。
 さってさて。ECMというJAZZの名門レーベルから出た、AAC(メンドクサイから略す)のアルバムである。1982年度ミュージック・マガジン誌脇谷浩昭氏選定ベスト10。1982年の2月号で中村とうよう氏が9点の採点の傑作アルバム。らしい。
 いや。傑作だと思うよ。楽しいし。中村とうよう氏が、好きかってに遊んでいるような演奏で密度は濃いとはいえないがゆったりしたこその良さを味わう、と書いてるが本当に上手いこと言うよなあ。
 子供の遊びちゃうか、と思わせるようなコンコンチキチキとかブーーーーーンとか。半分以上そんなんだもん。これを1時間ぐらいずーっと付き合う。勿論中には突然マーチになったり、飛んで行ったり喚いたり、ギリギリの所で集中力を切らさず居ると、最後の最後に大盛り上がりに突入。この5分だけのために80分ほどはじ〜と耐えるのだ。
 そうだ。この1時間のおあそび・・・・いやいや、助走時間があってこそのこの貴重な5分なのだ。そもそも本当の感動というものはそんなにお手軽に手に入るものではない。出会った瞬間に成就するより、10年かけた方が、最後やること同じでも感動の大きさは全く違うのだ。なお、この文章、かなり表現自粛しました。f(^^;)
 でも実際そうなのだ。たいく・・・、いやいや、静寂で深遠な序曲を聴き、自分の想像力を限界まで試され、最後に爆発する。まさに時間芸術の極地による傑作なのだ、これは。
 とはいえ、ま、その、もう一度最初から聴くかと言われりゃですね、いや、もちろん、そのですよ、きちんと味わうには最初から聴くしかないんですが、まあ、一度最後まで行ったら、やっばり、まあ、分かってるんだから、ちょっとぐらいは省い・・・、いやいや。ダメだダメだダメだ。やはりきちんと同じ時間を共有しないとイカンのだ。省いてはならん。
 かくもJAZZはキビシイ。  

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